12. 仮想環境とパッケージ

12.1. はじめに

Python アプリケーションはよく標準ライブラリ以外のパッケージやモジュールを利用します。またアプリケーションがあるバグ修正を必要としていたり、過去のバージョンのインターフェイスに依存しているために、ライブラリの特定のバージョンを必要とすることもあります。

そのため、1つのインストールされたPythonが全てのアプリケーションの要求に対応することは不可能です。もしアプリケーションAがあるモジュールのバージョン 1.0 を要求していて、別のアプリケーションBが同じモジュールのバージョン 2.0 を要求している場合、2つの要求は衝突していて、1.0 と 2.0 のどちらかのバージョンをインストールしても片方のアプリケーションが動きません。

この問題の解決策は 仮想環境 を作ることです。仮想環境とは、特定のバージョンの Python と幾つかの追加パッケージを含んだ Python インストールを構成するディレクトリです。

別のアプリケーションはそれぞれ別の仮想環境を使うことができます。先の例にあった要求の衝突を解決する場合、アプリケーションAが固有の仮想環境を持ってそこにライブラリのバージョン 1.0 をインストールし、アプリケーションBが持つ別の仮想環境にライブラリのバージョン 2.0 をインストールすることができます。そしてアプリケーションBがライブラリのバージョンを 3.0 に更新することを要求する場合も、アプリケーションAに影響しません。

12.2. 仮想環境の作成

仮想環境の作成と管理を行うためのモジュールが venv です。 venv は通常利用可能なもっとも新しいバージョンの Python をインストールします。複数のバージョンの Python がインストールされている場合、 python3 のように利用したいバージョンを指定して実行することで Python バージョンを選択できます。

仮想環境を作るには、仮想環境を置くディレクトリを決めて、 そのディレクトリのパスを指定して、 venv をスクリプトとして実行します:

python -m venv tutorial-env

これは tutorial-env ディレクトリがなければ作成して、その中に Python インタプリタ、その他関連するファイルのコピーを含むサブディレクトリを作ります。

仮想環境の一般的なディレクトリの場所は .venv です。この名前は、通常はシェルで隠されているため、ディレクトリが存在する理由を説明する名前を付けても、邪魔にはなりません。また、一部のツールでサポートされている .env 環境変数定義ファイルによるクラッシュも防止します。

仮想環境を作ったら、それを有効化する必要があります。

Windows の場合:

tutorial-env\Scripts\activate

Unix や Mac OS の場合:

source tutorial-env/bin/activate

(このスクリプトは bash shell で書かれています。 cshfish を利用している場合、代わりに利用できる activate.cshactivate.fish スクリプトがあります。)

仮想環境を有効化すると、シェルのプロンプトに利用中の仮想環境が表示されるようになり、python を実行するとその仮想環境の Python を実行するようになります:

$ source ~/envs/tutorial-env/bin/activate
(tutorial-env) $ python
Python 3.5.1 (default, May  6 2016, 10:59:36)
  ...
>>> import sys
>>> sys.path
['', '/usr/local/lib/python35.zip', ...,
'~/envs/tutorial-env/lib/python3.5/site-packages']
>>>

仮想環境を無効化するには、ターミナルに:

deactivate

と入力します。

12.3. pip を使ったパッケージ管理

 pip と呼ばれるプログラムでパッケージをインストール、アップグレード、削除することができます。デフォルトでは pipPython Package Index からパッケージをインストールします。ブラウザを使って Python Package Index を閲覧することができます。

pip は "install" 、 "uninstall" 、 "freeze" など、いくつかのサブコマンドを持っています。 (pip の完全なドキュメントは Python モジュールのインストール ガイドを参照してください。)

パッケージ名を指定してそのパッケージの最新版をインストールすることができます:

(tutorial-env) $ python -m pip install novas
Collecting novas
  Downloading novas-3.1.1.3.tar.gz (136kB)
Installing collected packages: novas
  Running setup.py install for novas
Successfully installed novas-3.1.1.3

パッケージ名のあとに == とバージョン番号を付けることで、特定のバージョンのパッケージをインストールすることもできます:

(tutorial-env) $ python -m pip install requests==2.6.0
Collecting requests==2.6.0
  Using cached requests-2.6.0-py2.py3-none-any.whl
Installing collected packages: requests
Successfully installed requests-2.6.0

同じコマンドを再び実行した場合、pip は要求されたバージョンがインストール済みだと表示して何もしません。別のバージョン番号を指定すればそのバージョンをインストールしますし、python -m pip install --upgrade を実行すればそのパッケージを最新版に更新します:

(tutorial-env) $ python -m pip install --upgrade requests
Collecting requests
Installing collected packages: requests
  Found existing installation: requests 2.6.0
    Uninstalling requests-2.6.0:
      Successfully uninstalled requests-2.6.0
Successfully installed requests-2.7.0

python -m pip uninstall コマンドに削除するパッケージ名を1つ以上指定します。

python -m pip show は指定されたパッケージの情報を表示します:

(tutorial-env) $ python -m pip show requests
---
Metadata-Version: 2.0
Name: requests
Version: 2.7.0
Summary: Python HTTP for Humans.
Home-page: http://python-requests.org
Author: Kenneth Reitz
Author-email: me@kennethreitz.com
License: Apache 2.0
Location: /Users/akuchling/envs/tutorial-env/lib/python3.4/site-packages
Requires:

python -m pip list は仮想環境にインストールされた全てのパッケージを表示します:

(tutorial-env) $ python -m pip list
novas (3.1.1.3)
numpy (1.9.2)
pip (7.0.3)
requests (2.7.0)
setuptools (16.0)

python -m pip freeze はインストールされたパッケージ一覧を、python -m pip install が解釈するフォーマットで生成します。一般的な慣習として、このリストを requirements.txt というファイルに保存します:

(tutorial-env) $ python -m pip freeze > requirements.txt
(tutorial-env) $ cat requirements.txt
novas==3.1.1.3
numpy==1.9.2
requests==2.7.0

requirements.txt をバージョン管理システムにコミットして、アプリケーションの一部として配布することができます。ユーザーは必要なパッケージを install -r でインストールできます:

(tutorial-env) $ python -m pip install -r requirements.txt
Collecting novas==3.1.1.3 (from -r requirements.txt (line 1))
  ...
Collecting numpy==1.9.2 (from -r requirements.txt (line 2))
  ...
Collecting requests==2.7.0 (from -r requirements.txt (line 3))
  ...
Installing collected packages: novas, numpy, requests
  Running setup.py install for novas
Successfully installed novas-3.1.1.3 numpy-1.9.2 requests-2.7.0

pip にはたくさんのオプションがあります。 pip の完全なドキュメントは Python モジュールのインストール を参照してください。パッケージを作成してそれを Python Package Index で公開したい場合、 Python packaging user guide を参照してください。