8.4. collections.abc --- コレクションの抽象基底クラス

バージョン 3.3 で追加: 以前はこのモジュールは collections モジュールの一部でした。

ソースコード: Lib/_collections_abc.py


このモジュールは、 抽象基底クラス を提供します。抽象基底クラスは、クラスが特定のインタフェースを提供しているか、例えばハッシュ可能であるかやマッピングであるかを判定します。

8.4.1. コレクション抽象基底クラス

collections モジュールは以下の ABC (抽象基底クラス) を提供します:

ABC

継承しているクラス

抽象メソッド

mixin メソッド

Container

__contains__

Hashable

__hash__

Iterable

__iter__

Iterator

Iterable

__next__

__iter__

Reversible

Iterable

__reversed__

Generator

Iterator

send, throw

close, __iter__, __next__

Sized

__len__

Callable

__call__

Collection

Sized, Iterable, Container

__contains__, __iter__, __len__

Sequence

Reversible, Collection

__getitem__, __len__

__contains__, __iter__, __reversed__, index, count

MutableSequence

Sequence

__getitem__, __setitem__, __delitem__, __len__, insert

Sequence から継承したメソッドと、 append, reverse, extend, pop, remove, __iadd__

ByteString

Sequence

__getitem__, __len__

Sequence から継承したメソッド

Set

Collection

__contains__, __iter__, __len__

__le__, __lt__, __eq__, __ne__, __gt__, __ge__, __and__, __or__, __sub__, __xor__, isdisjoint

MutableSet

Set

__contains__, __iter__, __len__, add, discard

Set から継承したメソッドと、 clear, pop, remove, __ior__, __iand__, __ixor__, __isub__

Mapping

Collection

__getitem__, __iter__, __len__

__contains__, keys, items, values, get, __eq__, __ne__

MutableMapping

Mapping

__getitem__, __setitem__, __delitem__, __iter__, __len__

Mapping から継承したメソッドと、 pop, popitem, clear, update, setdefault

MappingView

Sized

__len__

ItemsView

MappingView, Set

__contains__, __iter__

KeysView

MappingView, Set

__contains__, __iter__

ValuesView

MappingView

__contains__, __iter__

Awaitable

__await__

Coroutine

Awaitable

send, throw

close

AsyncIterable

__aiter__

AsyncIterator

AsyncIterable

__anext__

__aiter__

AsyncGenerator

AsyncIterator

asend, athrow

aclose, __aiter__, __anext__

class collections.abc.Container
class collections.abc.Hashable
class collections.abc.Sized
class collections.abc.Callable

それぞれメソッド __contains__(), __hash__(), __len__(), __call__() を提供するクラスの ABC です。

class collections.abc.Iterable

__iter__() メソッドを提供するクラスの ABC です。

メソッド isinstance(obj, Iterable) で使用すると、 Iterable__iter__() メソッドを持っているクラスを検出できます。しかし、__getitem__() メソッドで反復するクラスは検出しません。 オブジェクトが iterable であるかどうかを判別するにあたって、信頼できる唯一の方法は iter(obj) を呼び出す方法です。

class collections.abc.Collection

サイズ付きのイテラブルなコンテナクラスの ABC です。

バージョン 3.6 で追加.

class collections.abc.Iterator

__iter__() メソッドと __next__() メソッドを提供するクラスの ABC です。 iterator の定義も参照してください。

class collections.abc.Reversible

__reversed__() メソッドを提供するイテラブルクラスの ABC です。

バージョン 3.6 で追加.

class collections.abc.Generator

PEP 342 で定義された、イテレータを send(), throw(), close() の各メソッドに拡張するプロトコルを実装する、ジェネレータクラスの ABC です。generator の定義も参照してください。

バージョン 3.5 で追加.

class collections.abc.Sequence
class collections.abc.MutableSequence
class collections.abc.ByteString

読み出し専用の シーケンス およびミュータブルな シーケンス の ABC です。

実装における注意: __iter__(), __reversed__(), index() など、一部の mixin メソッドは、下層の __getitem__() メソッドを繰り返し呼び出します。その結果、__getitem__() が定数のアクセス速度で実装されている場合、mixin メソッドは線形のパフォーマンスとなります。下層のメソッドが線形 (リンクされたリストの場合など) の場合、mixin は 2 乗のパフォーマンスとなるため、多くの場合上書きする必要があるでしょう。

バージョン 3.5 で変更: index() メソッドは stopstart 引数をサポートしました。

class collections.abc.Set
class collections.abc.MutableSet

読み出し専用の集合およびミュータブルな集合の ABC です。

class collections.abc.Mapping
class collections.abc.MutableMapping

読み出し専用の マッピング およびミュータブルな マッピング の ABC です。

class collections.abc.MappingView
class collections.abc.ItemsView
class collections.abc.KeysView
class collections.abc.ValuesView

マッピング、要素、キー、値の ビュー の ABC です。

class collections.abc.Awaitable

await で使用できる awaitable オブジェクトの ABC です。カスタムの実装は、__await__() メソッドを提供しなければなりません。

Coroutine ABC の Coroutine オブジェクトとインスタンスは、すべてこの ABC のインスタンスです。

注釈

CPython では、ジェネレータベースのコルーチン (types.coroutine() または asyncio.coroutine() でデコレートされたジェネレータ) は、 __await__() メソッドを持ちませんが、待機可能 (awaitables) です。これらに対して isinstance(gencoro, Awaitable) を使用すると、 False が返されます。これらを検出するには、 inspect.isawaitable() を使用します。

バージョン 3.5 で追加.

class collections.abc.Coroutine

コルーチンと互換性のあるクラスの ABC です。これらは、コルーチンオブジェクト で定義された send(), throw(), close() のメソッドを実装します。カスタムの実装は、__await__() も実装しなければなりません。Coroutine のすべてのインスタンスは、 Awaitable のインスタンスでもあります。coroutine の定義も参照してください。

注釈

CPython では、ジェネレータベースのコルーチン (types.coroutine() または asyncio.coroutine() でデコレートされたジェネレータ) は、 __await__() メソッドを持ちませんが、待機可能 (awaitables) です。これらに対して isinstance(gencoro, Coroutine) を使用すると、 False が返されます。これらを検出するには、 inspect.isawaitable() を使用します。

バージョン 3.5 で追加.

class collections.abc.AsyncIterable

__aiter__ メソッドを提供するクラスの ABC です。asynchronous iterable の定義も参照してください。

バージョン 3.5 で追加.

class collections.abc.AsyncIterator

__aiter__ および __anext__ メソッドを提供するクラスの ABC です。asynchronous iterator の定義も参照してください。

バージョン 3.5 で追加.

class collections.abc.AsyncGenerator

PEP 525PEP 492 に定義されているプロトコルを実装した非同期ジェネレータクラスの ABC です。

バージョン 3.6 で追加.

これらの ABC はクラスやインスタンスが特定の機能を提供しているかどうかを調べるのに使えます。例えば:

size = None
if isinstance(myvar, collections.abc.Sized):
    size = len(myvar)

幾つかの ABC はコンテナ型 API を提供するクラスを開発するのを助ける mixin 型としても使えます。例えば、 Set API を提供するクラスを作る場合、3つの基本になる抽象メソッド __contains__(), __iter__(), __len__() だけが必要です。ABC が残りの __and__()isdisjoint() といったメソッドを提供します:

class ListBasedSet(collections.abc.Set):
    ''' Alternate set implementation favoring space over speed
        and not requiring the set elements to be hashable. '''
    def __init__(self, iterable):
        self.elements = lst = []
        for value in iterable:
            if value not in lst:
                lst.append(value)

    def __iter__(self):
        return iter(self.elements)

    def __contains__(self, value):
        return value in self.elements

    def __len__(self):
        return len(self.elements)

s1 = ListBasedSet('abcdef')
s2 = ListBasedSet('defghi')
overlap = s1 & s2            # The __and__() method is supported automatically

SetMutableSet を mixin 型として利用するときの注意点:

  1. 幾つかの set の操作は新しい set を作るので、デフォルトの mixin メソッドは iterable から新しいインスタンスを作成する方法を必要とします。クラスのコンストラクタは ClassName(iterable) の形のシグネチャを持つと仮定されます。内部の _from_iterable() というクラスメソッドが cls(iterable) を呼び出して新しい set を作る部分でこの仮定が使われています。コンストラクタのシグネチャが異なるクラスで Set を使う場合は、 iterable 引数から新しいインスタンスを生成するように _from_iterable() をオーバーライドする必要があります。

  2. (たぶん意味はそのままに速度を向上する目的で)比較をオーバーライドする場合、 __le__()__ge__() だけを再定義すれば、その他の演算は自動的に追随します。

  3. Set mixin型は set のハッシュ値を計算する _hash() メソッドを提供しますが、すべての set が hashable や immutable とは限らないので、 __hash__() は提供しません。 mixin を使ってハッシュ可能な set を作る場合は、 SetHashable の両方を継承して、 __hash__ = Set._hash と定義してください。

参考